BMW製ユニットをベースに独自チューンを施したエンジンと、先進の「6Dダイナミクス」が生み出す驚異のフラットライドを武器に、子供も魅了するハイパフォーマンスSUV、ディフェンダー・オクタの魅力とは?
【写真19点】「お父さん、このクルマが欲しい!」 SVO仕立てのディフェンダー・オクタは、父親の背中が映える最強SUV の詳細画像をチェック
約8年前、仕事の関係でエストリル・ブルーのレンジローバースポーツSVRを5日間ほど預かった。わが三兄弟のまだ長男しかいなかった時代のことだ。当時3歳の長男と身重の妻をSVRに乗せて、自宅のある相模原市から実家の世田谷まで走らせたが、長男はこのクルマの加速やエンジン音に大喜びしていた。
5リッターV8のスーパーチャージドエンジンを搭載した高性能SUVが、子育ての場面で輝くとは思いもしなかった。父親としては、「パパがすごい」と言われているような勘違いから、誇らしさを覚え、それと同時に、スペシャル・ビークル・オペレーション(SVO)が手がける官能マシンの魅力にも気づかされたのだった。
このディフェンダー・オクタもSVOが手がけた最新モデルであり、V8エンジンを搭載する最上位のディフェンダーに位置する。以前からディフェンダーには525psを発揮する「AJ133型」エンジンを積んだ通常のV8モデルがラインナップされていたが、オクタは同じV8でありながら、全く異なるエンジンを搭載している。
新たに採用されたのは、BMW謹製S68型エンジンを独自にチューンナップした「P615型」。635psを発揮するこのエンジンが、滑らかさと猛々しさを兼ね備えた走りを実現している。
たしかに「AJ133型」の「ブワァン」というドラマチックなサウンドや、スーパーチャージャー特有のアクセルレスポンスの付きの良さは魅力的だが、「P615型」を搭載するオクタは、異なる方向性でドライバーに価値を提供してくれる。
MHEVの電動アシストにより、渋滞時やストップ&ゴーでもストレスフリーな滑らかな走行を実現。豊かな低速トルクによってアクセルワークに余裕が生まれ、あらゆる速度域で扱いやすい特性を見せる。今回は検証できなかったものの、このトルク特性であれば、岩場や砂利道など繊細なコントロールが求められるシーンでも真価を発揮するだろう。
その結果、ステアリング操作時の車体の傾きや、ブレーキング時の前のめり感が大幅に抑制される。重量級SUVによくあるイヤな浮遊感とは無縁で、重心が一定に保たれることから、「高級リムジンのような快適さ」と胸を張って讃えたくなる。
さらに、ステアリング中央のホーンスイッチの下には「オクタ・モード」と呼ばれるモードスイッチが設置されており、エンジン、サスペンション、トランスミッションなどを一括して最もアグレッシブな設定へと切り替えることができる。
個人的に「6Dダイナミクス」とエキゾーストサウンドの組み合わせが絶妙で、東名高速道路下りの横浜町田出口にある大きな右カーブを、ほとんど車体の揺れを感じることなく爽快に駆け抜けた際の、野性的なV8サウンドは最高であった。この英国仕立ての高性能SUVには、他の追随を許さない魅力が満ちあふれている。
最後に、10歳になった長男と二人でドライブをした。嘘か本当か、速くて楽しい青色のクルマとして、レンジローバースポーツSVRのことを覚えていると言い、オクタもお気に入りの様子であった。
文=佐藤 玄(ENGINE編集部) 写真=篠原晃一
全長×全幅×全高 4940×2065×2000mm
ホイールベース 3020mm
トレッド(前/後) 1770/1760mm
車両重量(車検証記載前後軸重) 2610kg(1360kg:1250kg)
エンジン形式 V型8気筒DOHC32V+ツインターボ
総排気量 4394cc
ボア×ストローク 89.0×88.3mm
最高出力 635ps/6000-7000rpm
最大トルク 750Nm/1800-5855rpm
変速機 8速AT
サスペンション形式(前/後) ダブルウィッシュボーン/エア
ブレーキ(前/後) マルチリンク/エア
タイヤ(前後) 275/60R20
車両価格(税込) 2099万円
(ENGINE2025年8月号)
2025-06-28T21:07:01Z