スイスのマイクロ社が製造・販売する超小型EV「マイクロリノ」。
この、楽しげで便利そうだが、炎天下では走るサウナになりそうな小さなEVに朗報が。オプションのエアコンディショナーと、心地良く風を存分に浴びることのできるビーチバギー仕様が登場したのだ。
【写真71点】現代版イセッタにエアコンが搭載 ビーチ・バギーもある「マイクロリノ」にぜひ日本でも乗りたい!の詳細画像をチェック
2015年に開発がスタートし、2022年から生産されているマイクロリノは、ふたり乗りのマイクロ・カーで、欧州ではシトロエン・アミなどと同じく、免許が不要で、14歳から運転できる国もあるカテゴリーに属する。
車体サイズは全長×全幅×全高が2519×1473×1501mmで、車両重量は496〜530kg。230リットルの容量の荷室も備え、乗り降りはあの往年のイセッタのように車体前部の大きなドア開閉して行う。
搭載するモーターは最高出力/最大トルクが17ps/17.9Nmを発揮し、0-50km/hは5秒、最高速度は90km/hに留まる。だが、法規適合のため45km/h制限仕様も存在する。使い勝手のいいシティ・コミューターで、ヒーターやリア・ウインドウのデフロスターは備えるが、欧州でも最近は酷暑に見舞われることが多く、乗員の高温対策は欠かせなくなっている。
そこで用意されたのが、クール&コネクト・パッケージと銘打ったオプション。これにはエアコンディショナーをはじめ、プレミアム仕様のインテリア、スマートフォンのマウントとBluetoothスピーカーを装備し、コネクティビティの改良が図られている。
マイクロリノの90km/h仕様は現在3タイプで、5.5kWhバッテリーで航続距離93kmの“ベーシック”、10.5kWhで177kmの“ミッドレンジ”、15kWhで228kmの“ロングレンジ”が選べるが、クール&コネクト・パッケージが装備できるのは“ミッドレンジ”と“ロングレンジ”となる。
さらにもう1つ、夏を楽しく過ごせそうな仕様が「スピアッジーナ・リミテッド・エディション」。イタリア語でビーチを意味する車名は、かつてフィアット600ジョリーやシトロエン・メアリなど、コンパクト・カーの屋根を切り飛ばして製作された、ビーチ・カーと呼ばれるバギー的なクルマを指した呼び名から取られたものだ。
サイドとリアのウインドウはなく、キャンバス張りのハードトップは、中央の開口部カバーだけでなく、工具なしで丸ごと脱着が可能。ルーフ・サイドからリア・ピラーにかけてのボディ・ワークも排され、パイプ組みのロールバーが露出している。
室内はヨットにインスパイアされた仕立てで、ヴィーガン・レザーのシートや、コネクティビティ・パッケージを装備。バッテリーは10.5kWhの“ミッドレンジ”となる。発表された2色のボディ・カラーは、ポルトフィーノ・ブルーとサルデーニャ・セージという具合で、ネーミングでもリゾート気分を盛り上げてくれる。
なお45km/h仕様が約330万円、90km/h仕様が約350万円から、という通常モデルの価格は、マイクロ・カーとしては高いが、手頃な趣味のクルマと考えれば許容できる範囲だろう。ましてやエアコンがつくとなれば、日常使いからレジャー、ビジネスユースまで、ニーズはふくらみそうだ。
マイクロ社の母体であるマイクロ・モビリティー・システムズが手掛けるキック・スケーターなどは日本にも導入されており、マイクロリノにも日本からのオーダーが入っているとの話も。
電動キックボードよりも、この手の超小型EVが走りやすいような法整備のほうが、物流や交通、環境などの社会課題を、楽しみながら解決へ導く一助となるのではないだろうか。
文=関 耕一郎
(ENGINE Webオリジナル)
2025-07-05T08:07:07Z