優れた悪路走破性や高い機能性、存在感のあるルックスなど、SUVのイイトコはたくさんある。だから売れるのだ。しかし、狭くて混雑している日本では扱いづらい大柄なモデルが多いことも事実。それなら、日本の道路事情にジャストサイズのコンパクトSUVはいかが!?
文/木内一行、写真/トヨタ、日産、ホンダ、マツダ
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「どこをとってもスキがないトヨタSUVのドル箱」 トヨタ・ヤリスクロス
ヤリスの兄弟車という位置づけだが、ボディはひと回り大きく、デザイン的な相似点も少ない。その一方、クロスの名が与えられただけあり、大径タイヤを装着して最低地上高を170mm確保。スクエアなホイールハウスも力強い
半導体不足や型式指定をめぐる問題で一時期は生産が停止されていたものの、再開されてからは好調なセールスを記録しているヤリスクロス。
この人気の要因は、やはり扱いやすいサイズと映えるデザイン、そしてなんといっても手頃な価格設定。イマドキのクロスオーバーSUVが200万円少々(デビュー当初は約180万円!)から狙えるのは大きな強みだ。
基本的にはヤリスと共通の部分が多いが、SUVらしい力強さを表現しつつもシティ派ならではの洗練されたスタイリングは、クロスオーバーSUV大人気の現代にマッチする。
コンパクトなボディサイズながらユーティリティ性にこだわった荷室もセリングポイントで、トヨタのコンパクトSUVで初採用したデッキボードを駆使すればレジャーやアウトドアで活躍すること間違いなしだ。
もちろん高い経済性はヤリス譲り。ガソリン仕様とハイブリッドが設定され、どちらもエンジンは1.5リッター直3。電気モーターを備えるハイブリッドは、クラス世界トップレベルの低燃費を実現する。
デザインや質感、使い勝手や経済性など、すべてにおいて高レベルでまとまったヤリスクロスに、もはや死角は見当たらない。
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「自慢のパワートレインでライバルに差をつける」 日産・キックス
2016年からブラジルやメキシコ、中国などで販売されてきたキックス。日本ではe-POWERを搭載したハイブリッド専用モデルが2020年に投入されている。
アクティブなデザインのエクステリアや広くて質感の高い室内など魅力はあるが、一番の魅力はやはりe-POWERによる走り。
ご存じのとおり、e-POWERはエンジンで発電した電力を利用してモーターを駆動するシリーズハイブリッドだが、キックスでは従来のシステムよりも最高出力を20%向上させてよりパワフルな走りを実現。アクセルペダルの踏み戻しで車速調整できるのも、e-POWERならではだ。
そして、2022年のマイナーチェンジでは、自慢のe-POWERが第2世代に進化。モーターを強化するとともに低速走行時のエンジン始動頻度を低減し、走りとともに静粛性が高められた。
さらに、待望の4WDモデルが登場。こちらはリアにもモーターを搭載して前後の駆動力を自在にコントロール。悪路や雪道での走破性を高め、ワインディングロードでは爽快なコーナリングも味わえるという。
強力なライバルがひしめくコンパクトSUV市場では、他車にはない特色を打ち出すことが大切。キックスは日産独自の電動パワートレインで、その存在感を高めている。
「FMCで輝きを増したコンパクトSUVのベストセラー」 ホンダ・ヴェゼル
クーペのパーソナル性とミニバンの扱いやすさを融合させたクロスオーバーとして登場し、世界で支持され累計販売台数384万台を記録したヴェゼル。そんなSUV界のヒットモデルも、2021年に2代目へモデルチェンジした。
ボディサイズやホイールベースは先代とほぼ同じだが、見た目は大きく変わった。先代よりもCピラーを傾斜させてよりクーペライクなスタイリングとし、ボディと一体感を高めたインテグレーテッドグリルが個性的なマスクを作り出している。
フロントバンパーやサイドシルなどの形状を最適化して空力性能を高めていることも特徴だ。
また、初代から受け継いだセンタータンクレイアウトにより高効率パッケージを実現。コンパクトボディでスタイリッシュなスタイリングながら、ゆとりある快適な居住空間を確保している。
そして、最も注目すべき部分がパワートレイン。ガソリン仕様とハイブリッドをラインナップし、前者は新開発の1.5リッター直4を搭載。後者は発電用と走行用の2つのモーターを備える「e:HEV」が新たに採用され、燃費と走りをより高い次元で両立したのである。
コンパクトSUVのなかでも屈指のベストセラーは、モデルチェンジでさらに魅力を増したのだ。
「10年経って成熟されたCXシリーズの末っ子」 マツダ・CX-3
魂動デザインを取り入れたエクステリアは、カタマリ感を持たせつつ伸びやかなキャビンや短いオーバーハングで存在感のあるプロポーションを構築。精密に研ぎ澄まされた金属感や硬質感を表現したという外板色もポイント
今やマツダの屋台骨となっているCXシリーズだが、そのなかで末っ子にあたるのがCX-3。
その魅力は、なんといってもマツダのデザインテーマ「魂動」による美しさと先鋭を追求したデザインで、市街地でも取りまわしやすいコンパクトサイズながら存在感は抜群。
また、全高を1550mmに抑えて機械式立体駐車場に入庫可能としたこともポイントだ。
CX-3のもうひとつの特徴が、ディーゼルエンジン専用車として登場したこと。搭載される1.5リッターターボディーゼルは、2.5リッターガソリンエンジンを上回るほどのトルクと優れた燃費・環境性能を実現。
ただ、2017年に2リッターガソリンを追加し、その翌年にはディーゼルを1.8リッターに変更。2020年には1.5リッターガソリンが加わり、その後2リッターガソリンが消滅するなど、時間の経過と共にエンジンラインナップも目まぐるしく変わった。
そして、デビューから10年経っているだけあり、改良や装備の変更などを幾度となく実施。
その成果もあってか、長期間にわたって販売されているにもかかわらず昨年の新車販売台数はトップ50に入るなど、モデル末期とはいえまだまだ元気なのだ。
「サイズはコンパクトでも立派な高級車」 レクサス・LBX
エントリーモデルとして2ボックスのCTを設定するように、レクサスはSUVにもコンパクトサイズのLBXを投入した。
しかし、そこはプレミアムブランド。小さくて扱いやすいだけでなく、クラスを超えた質感と走り、そして存在感と上質さを併せ持つデザインのハイブリッド専用SUVとしてデビューさせたのだ。
全長こそヤリスクロスとほぼ同じながら全幅は60mmもワイドで、レクサスの新たなファミリーフェイス「ユニファイドスピンドル」を採用。マッシブでカタマリ感のあるフォルムは、1.5リッタークラスとは思えないほど力強く、華やかだ。
パワーユニットは1.5リッター直3+モーターのハイブリッド。エンジンはヤリスクロスと同じだがモーターはより強力で、爽快な加速やリニアな走りを実現してくれる。
このように、LBXは上質なだけでなく走りも魅力的なわけだが、その長所をさらに高めたのが2024年に登場した「MORIZO RR」。
モリゾウこと豊田章男氏の名が与えられたこのモデルは、内外装や足回りはもちろん、エンジンも1.6リッターターボに変更されるなど、ホンキのハイパフォーマンスモデル。
小さな高級車は走りも一級品なのである。
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投稿 都会派SUVは“ムダなしサイズ”がキモ! 今こそ選ぶべきは「ジャストサイズSUV」だ! は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。
2025-06-30T22:08:30Z