アルファードPHEVはHVよりも183万円高い! いまや軽も250万円! そもそもなんで最近の新車価格は爆上がりしているのか?

 最近、新車の車両本体価格は、「え、こんなに高かったの?」と驚くぐらい、爆上がりをしている。なぜこんなに高くなったのか、解明していきたい。

文:渡辺陽一郎/写真:ベストカーWeb編集部

【画像ギャラリー】40系アルファードの新車価格は30系から100万円爆上がり?(6枚)

シビックタイプRとアルファードの価格爆上がりって?

シビックタイプRレーシングブラックパッケージは599万円。現在受注停止している。大手中古車情報検索サイトでは699万~710万円

 最近の新型車は、価格が大幅に値上がりしている。例えばホンダシビックタイプRレーシングブラックパッケージは599万8300円だ。ベースになったタイプRの499万7300円に比べて約100万円高い。

 レーシングブラックパッケージの内容は、文字通り内装がブラックになり、ワイヤレス充電器と自動防眩ルームミラーが加わる程度だ。色彩の変更と装備の追加に伴う価格アップは、多く見積っても30万円前後に留まる。

 そしてシビックタイプRは2022年9月に発売されながら、短期間で生産枠の上限に達して受注を停止させた。この後、2025年1月にレーシングブラックパッケージを投入したが、ベースのタイプRは販売を再開していない。したがって時系列で見ると、タイプRの後継としてタイプRレーシングブラックパッケージが発売されており、実質100万円の値上げと受け取られる。

先代30系のアルファードSCパッケージは468万1600円だった

 現行の40系アルファード&ヴェルファイアは新車登場時に価格爆上がりであっと言わせた。3代目アルファードの新車価格は359万7000円〜775万2000円となっており、特に人気の高い2.5Lガソリンモデルの「S ”Cパッケージ“」で468万1600円だった。

 それがガソリンモデルのXが510万円、Zが555万円、ハイブリッドのエグゼクティブラウンジが860万円と先代30系オーナーからは手が出ないという声も聞かれた。

アルファードPHEVエグゼクティブラウンジの価格は1065万円

 アルファードは2024年12月に、PHEV(充電の可能なハイブリッド)エグゼクティブラウンジE-Fourを追加した。この価格は1065万円で、ノーマルタイプのハイブリッドエグゼクティブラウンジE-Fourよりも183万円高い。

 ただし同じトヨタのPHEVでも、プリウスPHEV・Gは、プリウスハイブリッドGに比べて価格アップを60万円に抑えた。

 そこでプリウスとアルファードのPHEVを比較すると、機能に大きな差はない。プリウスのPHEVは、総電力量が13.6kWhのリチウムイオン電池を搭載して、1回の充電でWLTCモードにより87kmを走行できる。

 アルファードのPHEVは、リチウムイオン電池の総電力量が18.1kWhに増えるが、ボディが重く空気抵抗も多いLサイズミニバンとあって、1回の充電で走れる距離は73kmに留まる。アルファードのPHEVは、プリウスと違って急速充電器を使用できるが、PHEVとハイブリッドの価格差がプリウスは60万円、アルファードは183万円では金額の差が開きすぎだ。

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一方で新型ムーヴの価格は抑えられている

Lグレードは2WDで135万8500円。上級グレードがガンメタリック塗装のフロントグリルを採用するのに対し、ブラックグリルを装備。またマニュアルエアコンが標準装備で、スマートキーは標準装備されていない

 2025年6月に発売された新型ダイハツムーヴは、スライドドアを装着しながら、Lの価格を135万8500円に抑えて話題になった。ちなみに新型ムーヴは、2年前の2023年5月中旬、一度予約受注を開始しながらダイハツの認証不正問題で発売を延期した。

 2年前の予約受注における新型ムーヴLの価格は129万2500円だったから、現在のLが安いといっても、2年前に比べると6万6000円値上げされている。

 軽自動車はほかの車種でも値上げが目立つ。日産サクラは2022年5月の発表時点では、Xの価格が239万9100円だった。これが2022年12月に254万8700円へ値上げされ、2024年5月の改良では259万9300円に達した。2年間で約20万円値上げされた。

N-BOXカスタムターボは212万9600円。コーディネートスタイル(モノトーン)は228万1400円。オプション、諸費用含めた乗り出し価格は250万円オーバーになる場合もある

 ホンダN-BOXも同様だ。2023年10月に現行N-BOXが発売された時の2WDの価格は、標準ボディが164万8900円、カスタムターボは204万9300円だった。

 それが2024年9月、2025年4月にも改良などを実施して値上げされ、今の価格は標準ボディが173万9100円、カスタムターボは212万9600円だ。N-BOXは発売から1年半で、標準ボディが9万200円、カスタムターボは8万300円高くなった。

最近のクルマが大幅に値上げされている理由とは

アルファードエグゼクティブラウンジPHEVは1000万円オーバーのクルマとなってしまった

 それにしても、なぜ最近のクルマは大幅に値上げされるのか。開発者に尋ねると、必ず聞かれる理由が原材料費と輸送費の高騰だ。「今はお客様の想像を超えるほどコストが高く、値上げせざるを得ない」という。

 特に軽自動車が切実だ。軽自動車の開発者は「もともと薄利多売の商品で、メーカーや販売会社の利益が少ない。今のように原材料費や輸送費が高騰すると、利益を減らして吸収することができず、値上げを実施せざるを得ない」としている。

 一方高価格車では、需要に生産規模が追い付かず、納期が遅延したり、受注を停止させる車種が増えた。その結果、転売が横行して、中古車価格が新車価格を上まわる市場の混乱も招いている。

 その結果、メーカーは「今なら新車価格を吊り上げても買ってもらえる」と判断するようになったのではないだろうか。冒頭で触れたホンダシビックタイプRレーシングブラックパッケージの100万円値上げはこの典型だ。ホンダの関係者や販売店からは「2025年中に発売されるプレリュードも、価格を550万~600万円に設定するらしい」という話が聞かれる。

 アルファードPHEVエグゼクティブラウンジE-Fourの1065万円も同様だ。現行型のアルファードとヴェルファイアは、先代型も含めて需要に生産が追い付かない状態が続く。そのために2023年6月に現行型へフルモデルチェンジした時点では、上級グレードのみを用意した。

 2024年12月に、アルファードはハイブリッドにベーシックなXを加えたが、PHEVは依然として最上級になるエグゼクティブラウンジのみの設定で価格も割高だ。

 この背景には、原材料費や輸送費の高騰に加えて「アルファードの上級グレードを買う人は、細かな価格の差にこだわらず、たとえ割高でも寛容だ」というメーカーの見方もあるだろう。

 過去を振り返ると、トヨタは以前のクラウンマジェスタなども、上級グレードの価格は割高だった。当時、開発者に「この価格なら本革シートを標準装着すべきでは?」と尋ねたら「確かに価格のバランスを考えると標準装着にしても良いが、オプションでも購入していただける」と返答された。本革シートがオプションでも買ってもらえるなら、わざわざ標準装着にして利益を減らす必要はない、という見方だ。

お買い得な価格設定のクルマはないのか?

 ユーザーの性格や気持ちに応じた価格設定は、トヨタの巧妙なやり方だ。あるトヨタの商品企画担当者は「価格は原価とは関係ない」と言い切った。もちろん価格と原価は無関係ではないが、商品の販売で成功するには、価格を製造原価で決めることはできないという意味だ。

 例えば特定の地域で価格競争の激しいカテゴリーは、儲けを減らしても価格を安く抑え、競争力を強めて売れ行きを増やす。その代わり同じ地域で扱う価格競争の穏やかな高価格車は、価格を割高にして確実に稼ぎ、価格競争を強めた安価な車種の利益を補う。

 このように価格競争力と各市場の利益を調和させる方法は、メーカーを問わず行われている。いい換えれば、各車種の価格設定と買い得度は、所属しているカテゴリーの販売規模やライバル車との関係、メーカーの取り組み方によっても変わってくる。

 したがって新車を買う時も、価格競争の激しい販売の好調な車種に注目したい。特に販売ランキングの上位車種で、なおかつ価格が300万円以下のクルマには買い得車が多い。

 カテゴリーでいえば、全長が4.5m未満のコンパクトハッチバック/コンパクトSUV/コンパクトミニバン、軽自動車を対象にして、運転感覚や居住性、価格設定などを比べて判断すると買い得車を見つけられる。

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2025-07-04T09:39:07Z