ハイブリッド車の販売が米国で急増、人気の理由と専門家のオススメ車種

何年もの間、「遅かれ早かれ、電気のみで走る自動車の未来がやって来る」というのが自動車業界における常識だと思われていた。2023年中に47%と大幅に増加した電気自動車(EV)の新車販売台数は、この考えを裏づけるかのようだった。だが、あいにく2024年に入るとこの分野の勢いは鈍化。米国では第1四半期に顧客に納車されたEVの台数は2.7%増という非常に遅いペースに留まった。同時期の全メーカー・全車種の新車販売台数が平均5%増だったのに比べると、その半分ほどだ。

アナリストたちは、一般大衆の購入者が不足しているためにEVの普及が実際に進まないことを懸念している。今のところ、EVの購入者は環境を重要視するアーリーアダプター)がほとんどを占めている。また、昨年末にはEVの欠点に関する悪い報道が相次いだことも、普及促進の妨げとなった。特に、現実的な使用では航続距離(一度の充電で走行可能な距離)がメーカーの宣伝より大幅に短かったり、そもそも数が少ない公共充電設備が問題が多くて当てにならないことに不満を抱くEVオーナーの声を伝える報道は、多くの人々をEVの購入に消極的にさせた。

ハイブリッドが脚光を浴びる

しかし、同期間にEVより安価なハイブリッド車の販売は急激に増加し始めた。燃料費の節約や二酸化炭素排出削減に関心があるものの、はるかに高価なEVに乗り換えるほどではないと考える人々が、ハイブリッド車を購入しているのだ。

トヨタは、経営陣がEVに全面的に賭けようとせず、大部分がハイブリッドに固執していると批判されてきたが、同社の電動化車両(1台のEVを含む)の販売台数はこの第1四半期に36%も増加し、非常に好調だった。その上を行くのがフォードで、同社のハイブリッド車の販売は42%増加した。その中には小型ピックアップトラック「マーベリック」やフルサイズピックアップ「F-150」のハイブリッドモデルが含まれる。

2024年に米国で販売されている従来型のガソリン/電気のハイブリッド車で、最も燃費がよいと推定される車種は、やはりトヨタの「プリウス」である。その最も効率に優れる仕様の燃費は、米国環境保護庁(EPA)発表の数値で、市街地57mpg(約24.2km/L)、高速道路56mpg(約23.8km/L)となっている。EPAは、2024年型プリウスで年間1万5000マイル(約2万4000km)の距離を走行すると、燃料費は平均900ドル(約13万6000円)になると見積もっている。平均的な自動車所有者は、プリウスに乗り換えれば、すべての新車平均と比較して、5年間で4500ドル(約68万円)も節約できることになる。

ハイブリッド車の仕組み

よく知らない人のために説明すると、ハイブリッド車は従来型のガソリンエンジン(欧州車の中にはディーゼルエンジンを使ったものもある)を主体的な動力源とし、これに1個または複数の電気モーターを組み合わせ、必要に応じてエンジンをモーターが補助することで、加速や燃費を最大化するという仕組みだ。

ハイブリッド車の駆動用バッテリーは自己充電式で、アクセルペダルから足を離した減速時や降坂時に失われていたエネルギーを回生してバッテリーに蓄える。それ以外にエンジンで発電機を回してバッテリーを充電する機能を持つ車種もある。

いずれにせよ、外部の充電器からプラグを接続することはなく、航続距離は燃料タンクのガソリン(または軽油)によって決まる。車種によってはアイドリング時だけでなく発進時や低速走行時にエンジンを停止させてモーターのみで走行できるものもあり、その間の実質的な燃料消費率はゼロとなり、さらに燃料を節約できる。

ほとんどのハイブリッドの乗用車、トラック、SUVは、内燃エンジンのみをパワーユニットとして搭載する標準モデルより依然として高価だが、その差は着実に縮まってきており、現在ではいくつかの主要な車種では比較できる水準にある。例えば、前述のトヨタ・プリウスは2万7950ドル(約420万円)からという価格で、すべての新車の平均価格の約4万8000ドル(約730万円)よりだいぶ安い。フォード・マーベリックのベースモデルは、2.0リッターのガソリンエンジン搭載車が2万3815ドル(約360万円)であるのに対し、2.5リッターのハイブリッド車は2万5315ドル(約380万円)と、価格差は小さい。

また、プラグインハイブリッドと呼ばれる種類のクルマも数多く販売されている。これは一般的なハイブリッド車よりも大容量のバッテリーを搭載しており、外部から充電することも可能。一度の充電で20〜100km近い距離を電力のみで走行できる。バッテリーが消耗すると、普通のハイブリッド車と同様にエンジンが始動し、ガソリンと電気の組み合わせで走行する。

ただ、残念なことに価格はさらに高くなる。例えば、トヨタの「プリウス プライム(日本名:プリウス プラグインハイブリッド)」は、通常のプリウスより5000ドル(約75万円)ほど高い。このプラグインハイブリッドは今後、別の記事で改めて取り上げることにしよう。

最も費用対効果の高い車種

米国でEPAによる燃費評価が最も高く、車両価格(輸送料、諸費用、諸税抜きの価格)が最も安い、2024年モデルのハイブリッド車を10車種ご紹介しておこう。それぞれ平均的なドライバーの年間推定燃料費と、日本でも販売されている車種はその消費税込価格と(日本で一般的な)WLTCモード燃費のメーカー発表値も記しくおく。

トヨタ・プリウス

車両価格:2万7950ドル(約420万円)から

EPA燃費:市街地57mpg(24.2km/L)、高速道路56mpg(23.8km/L)

年間燃料費:900ドル(約13万6000円)

日本価格:320万円から

WLTCモード燃費:28.6km/L

ヒョンデ・エラントラ ハイブリッド ブルー

車両価格:2万6250ドル(約400万円)から

EPA燃費:市街地51mpg(21.7km/L)、高速道路58mpg(24.7km/L)

年間燃料費:950ドル(約14万4000円)

キア・ニロ

車両価格:2万6940ドル(約410万円)から

EPA燃費:市街地53mpg(22.5km/L)、高速道路54mpg(23.0km/L)

年間燃料費:950ドル

トヨタ・カムリ ハイブリッド

車両価格:2万8855ドル(約440万円)から

EPA燃費:市街地51mpg(21.7km/L)、高速道路53mpg(22.5km/L)

年間燃料費:1000ドル(約15万1000円)

トヨタ・カローラ ハイブリッド

車両価格:2万3500ドル(約360万円)から

EPA燃費:市街地53mpg(22.5km/L)、高速道路46mpg(19.6km/L)

年間燃料費:1000ドル

日本価格:241万8600円から

WLTCモード燃費:30.2km/L

ヒョンデ・エラントラ ハイブリッド

車両価格:2万9450ドル(約445万円)から

EPA燃費:市街地49mpg(20.8km/L)、高速道路52mpg(22.1km/L)

年間燃料費:1000ドル

ヒョンデ・ソナタ ハイブリッド

車両価格:3万800ドル(約575万円)から

EPA燃費:市街地44mpg(18.7km/L)、高速道路51mpg(21.7km/L)

年間燃料費:1100ドル(約16万6000円)

キア・スポーテージ ハイブリッド

車両価格:2万8590ドル(約430万円)から

EPA燃費:市街地42mpg(17.9km/L)、高速道路44mpg(18.7km/L)

年間燃料費:1200ドル(約18万1000円)

トヨタ・カローラ クロス ハイブリッド

車両価格:2万8220ドル(約430万円)から

EPA燃費:市街地45mpg(19.1km/L)、高速道路38mpg(16.2km/L)

年間燃料費:1200ドル

日本価格:276万円から

WLTCモード燃費:26.4km/L

トヨタ RAV4 ハイブリッド

車両価格:3万1725ドル(約480万円)から

EPA燃費:市街地41mpg(17.4km/L)、高速道路38mpg(16.2km/L)

年間燃料費:1300ドル(約19万7000円)

日本価格:353万8000円から

WLTCモード燃費:21.4km/L

※ソース:EPA、年間燃料費は、レギュラーガソリン価格平均3.38ドル/ガロン、市街地45%・高速道路55%を使用し、1万5000マイルを走行すると想定して算出。

forbes.com 原文

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